お話ししたいことがあったのですが、長くなりそうだし、あなたがとてもお忙しそうなので手紙に書いてみました。おひまなときに読んでくださったら嬉しいです。

 あなたに是非さしあげたいものがあります。それは「自信」と「勇気」です。
 もちろん、あなたはすでに十分な「自信」と「勇気」を持ち合わせていらっしゃることでしょう。でも、私がさしあげたいのは、それ以上のもの、「完全な自信」と「最後の一歩を踏み出す勇気」です。それは、私が人にあげたいなどと思ってもそう簡単にあげられるものではないでしょう。私がこのような手紙を書くことで、あなたにそれをあげられるかどうかはわかりません。けれども、私はどうしても、あなたにその「自信」と「勇気」をさしあげたいと思うので、一生懸命書いてみます。

 父が亡くなったりとか、いろいろあって、しばらくXXXXに行く気になれませんでした。しばらくぶりに行ってみようかなと思ったのは、実は、あなたの夢を見たからです。
 その夢の話をする前に、ひとつ質問があるのですが、あなたは「運命の人」とか、「自分の本当の相手」の存在を信じますか。あなたは浜崎あゆみが好きだとおっしゃっていましたよね。彼女の歌にはそういう相手について歌ったものが多いので、どんな人のことか、なんとなくわかるでしょう。あるいは、あなたはもう「この人こそ、運命の人だ」と思えるような人に出会ったのかもしれませんね。

 私が自分の「運命の人」に出会ったのは十年前、困ったことに、もう私が結婚してしまった後でした。それは私が大学で教えはじめて間もないころで、家庭生活も平和で安定していたし、自分のやっていることにそれなりの自信もありました。
 そんな私にとって、彼との出会いは衝撃的でした。私は彼と心の最も深い部分でふれあえるのを感じました。彼は私に自分の「行い」や「姿」ではなく、自分の「存在そのもの」に対する自信を与えてくれました。私はまさしく、この人と出会うために生まれてきたんだ、というような・・・
 でも当時の私には、自分の本当の気持ちを許す勇気がありませんでした。家庭は絶対に壊してはいけないと思っていましたし、何より、他人に「お前は悪い人間だ」と言われるのがこわかったのです。だから彼に強くひかれる気持ちを強引に押さえつけてしまいました。彼への思いが深かった分だけ、それは致命的な心の傷となって残ってしまいました。
 その後私は身も心も病気になってしまって、ほとんど死にかかっていたのですが、そんな私を救ってくれたのは○明でした。私が彼に出会ったとき、○明は3歳でしたが、そのときすでに彼が私の「本当の相手」であることを見抜いていました。そして、5歳の時、父親の「本当の相手」を見つけてきて、「僕はお母さんを取り替えたい」と言い出して、私を家庭から解放してくれたのです。(この話はもっとくわしく話せばとてもおもしろいのですが、大変長くなってしまうのでやめておきます。)

 誰にでもたった一人の「本当の相手」がいる、ということを、私はそのとき○明から教わりました。それはとても素晴らしい発見でした! 誰でも、自分の本当の相手と結ばれさえすれば、自分自身に対して、完全な自信を持つことができます。どんなことにも立ち向かえる勇気が生まれます。心の底から本当に幸せになれるのです。心の底から幸せになれた人は、他人にもその幸せを分けてあげたいと思うものです。世の中にこんなに争いが多いのは、ほとんどの人が、結婚する相手を間違えてしまったからだと私は思います。
 私は世の中の人はこんな風にみんな根っこでつながっていると思うのです。
            
自分の本当の相手(自分と正反対の側にいる人)と出会えれば、まさにその場所でこの世のすべての人と自分がひとつにつながっていることを感じることができます。(浜崎あゆみもそんなこと歌ってましたよね。)みんながひとつだと気付けば、誰も他人を傷つけようなどとは思わなくなります。他人を傷つけることは、自分を傷つけることと同じだということがわかるからです。この世を平和にするのは決して難しいことではありません。すべての人が自分の本当の相手のところに帰りさえすればいいのですから。でも、今はまだ表面的な部分だけで生きている人が多く、そのことに気付ける人はそんなに多くはありません。

 私が彼と出会ってから十年、私が離婚してから八年がたちました。でも私たちは十年前に負ってしまった傷のせいで、いまだに会えないでいます。また傷ついてしまうのではないかとこわくて、お互いに対して心を開けないでいるのです。本当に引かれ合う二人がその引力に逆らって傷ついてしまうと、これほどまでに深い痛手を負ってしまうものなのです。私はこの八年間、大学で学生たちにこの話をたくさんしてきました。この世で何よりも大切なのは、自分の本当の相手に会うことで、どんなにこわくてもその相手から逃げないことだと。本当の相手に出会うためには、ときには崖から飛び降りるような勇気を必要とすることがあるので。
 何人かの学生とはとても深い話をすることができました。彼らと話していると、我々は皆つながっているのだな、ということをしばしば実感します。何人かの人に、同じような変化が同時に起きることがよくあるのです。本当の幸せというものは、決して一人の人だけに訪れるものではないようです。誰かが本当に幸せになれたとき、みんなにも同時に幸せが訪れるような気がします。

 最近は本当の相手を見つける人がずいぶん増えてきたように思います。浜崎あゆみの歌もずいぶん明るくなってきましたよね。今年の夏になって、ようやく私の心もほとんど開いてきて、もうすぐ彼に会えるかもしれない、と思っていたとき、なぜかあなたの夢を見ました。あなたは夢についてどう思っていらっしゃるかわかりませんが、私は彼に会えない長い間に、彼との唯一のコミュニケーションの手段が夢になってしまったせいで、意味のある夢を見ることが多くなり、正夢もよく見ることがあります。だからあなたの夢を見たことにも何か深い意味があるのではないか、と思ってしまいます。
 前置きが長くなってしまいましたが、どんな夢かお話ししましょう。
 あなたと、あなたの本当の相手(誰だかわかりません)が出てきました。「彼女」はあなたにとても会いたがっていて、抱きしめてもらいたいと思っていました。あなたは「彼女」のところまで来たのに、そこでためらって、引き返してしまいました。「彼女」は私のところにやってきて、あなたが抱きしめてくれなかったと言って泣きました。それで私が「それでも彼はあなたのところに来たではありませんか。大丈夫ですよ。もう少し待てば、きっと抱きしめてくれるはずです。」と言って「彼女」をなぐさめている夢でした。
 あなたは十年前の私の彼とよく似たところがあるような気がします。それは自分で決めた自分の道を自分の足で歩いている、ということです。それはとても美しい生き方だけれども、孤独な道で、決して楽なことではありません。周りに適当に合わせて、誰かの言いなりになって生きる方が人生はずっと安易で楽なはずですよね。でもそれでは自分にうそをつくことになってしまいます。自分にうそをついている人は、決して真実に出会うことはできません。
 私は、私の彼とあなたがどこかでつながっているように感じます。同じように、誰かわからないあなたの本当の相手と私もどこかでつながっているのかもしれない、と思います。こんなふうに私が手紙を書いているのも、「彼女」があなたに言いたくても言えないことを、私が代弁しているのかもしれません。

 私は前からずっとあなたのことを尊敬しています。決してお世辞ではありませんよ。あなたはときどき私をはっとさせるようなことを言うのですが、それはあなたの言葉が他人の受け売りではなく、自分自身のとても深いところから出ている証拠です。私は人間の本当の価値はその人の深さだと思います。人間の深さというのは年齢や学歴とは全く関係ありません。○明は赤ん坊の頃からずっと私をはっとさせ続けてきました。○明は今でもある意味で私の先生です。
 最近XXXXに行くようになってから、前にも増してあなたは素敵だなあと思うようになりました。あなたが素敵だと思えば思うほど、私の心もますます開いていくのを感じます。それからまたあなたの夢を2回見ました。はじめの夢の内容はよく覚えていません。2回目は、あなたがふたり出てきました。ひとりのあなたは私と話をしてくれるのですが、もう一人のあなたは全然話をしてくれませんでした。あなたが二つに分裂してしまったのかな?それであなたに手紙を書いてみようかと思いました。

 あなたは本当に素晴らしい人です。あなたは自分が思っているよりもはるかに大きな人です。働いている姿ももちろんすごく素敵ですが、何もしなくても、そのままで本当に素敵です。私の夢の中であなたがためらってしまったのは、あなたにあと一歩の自信が足りなかったからだと思うのです。どうかありのままの自分に自信を持ってください。そして、今度「彼女」に出会ったら、最後の一歩を踏み出して、「彼女」を抱きしめてあげてください。そうすれば「彼女」はあなたに完全な自信と無限の勇気をくれるはずです。

 自分に正直に、今の気持ちを包み隠さず書いてみました。彼に出会ってから、どんなときも自分に正直になることが一番大切であることを学んだので。
 長い手紙を読んでくださってありがとうございます!!

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