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「浜崎あゆみ言語論」

前回浜崎あゆみの歌詞を引用したので、ここで、彼女の歌に出てくる印象的なフレーズを集めてみよう。

まず、「反義語=同義語」に類するもの。

きっと光と影なんて
同じようなもので
少し目を閉じればほらね
おのずと見えるさ

喜びのうらにある悲しみも
苦しみの果てにある希望も

どんなに遠く離れていても
僕らはいつでもそばにいる

全ては偶然なんかじゃなく
全ては必然なコトばかりかも知れない   (Daybreakより)

光=影、目を閉じれば見える、喜び=悲しみ、苦しみ=希望、遠く離れていてもそばにいる、偶然=必然のような、対立する二つのものがイコールで結ばれる常識的な論理ではあり得ない公式を提示することによって、彼女はわれわれの思考の枠を越えた何かを指し示そうとしている。そして、それは対立するもの同士の妥協によってではなく、対立の極限において成立する公式であることを、彼女は見抜いているのである。

それは般若心経の色即是空、空即是色の意味するところと本質的には同じであり、そのような深遠な内容を難解な表現を使わずに明快に言い切っているところに彼女の凄さがある。似たようなフレーズはSURREALにも出てくる。

どこにもない場所で
私は私のままで立っているよ

どこにもない場所とは果たしてどこか。それは裏返せばどこでもあるということである。私はこの世に遍在する。
 彼女はまた、こんな言い方もしている。

僕達はそう自由で
ただ余りに自由すぎて
何処へだって行け過ぎて
何処へも行けずにいた   (everywhere nowhereより)

私たちがこんなにも不自由なのは、本当は、あまりに自由すぎるからだ、というのである。そう、むしろ人は、適当に不自由で、できることが限定されていたら、何かしやすいのだろう。何でもできるからこそ、足がすくんでしまったのだ。でも、今やこの社会は、不自由であることに行き詰まってしまっている。もうそろそろ、自分を不自由にしているのは自分自身であることに気づかなければなるまい。

彼女は、われわれが創造すべき新しい社会の青写真についての示唆も与えている。

くだらなく見える毎日の中には
幸せのトリックかくれてて
それは必ず皆で分かち合える
ように作られているからね   (AUDIENCEより)

そして、どうしたらそこに到達できるのかについて。

好きなモノだけを 選んでくのが
無責任だってワケじゃない
好きなモノさえも見付けられずに
責任なんて取りようもない
背負う覚悟の分だけ可能性を手にしてる(中略)
どんなに孤独が訪れようと
どんな痛みを受けようと
感覚だけは閉ざしちゃいけない(中略)
語り明かしたいつかの夢だって
ひとりじゃ叶えようもない  (SURREALより)

お金なんかじゃ 終わりは見えてる
栄光もたかが知れてる
解らないフリをいつまで続ける  (too lateより)

現実は裏切るもので判断さえ誤るからね
そこにある価値はその目でちゃんと見極めていてね
自分のものさしで  (evolutionより)

目の前の悲劇にさえ対応できずに
遠くの悲劇になど手が届くはずもなく(中略)
本当は扉を開きたいんだって、
口に出して言ってみればいい  (Immatureより)

私がカラオケで好んで歌うのは、Depend on youである。いつも月○に対するメッセージとして。

あなたがもし旅立つ
その日が いつか来たら
そこからふたりで始めよう

けれども、彼に対して、一番言いたいのは、次のフレーズかな…

君がいたから どんな時も 笑ってたよ 泣いていたよ 生きていたよ
君がいなきゃ何もなかった  (TO BEより)

追記:以前息子と出かけた鉄道旅行で、只見線のとある温泉旅館に泊まったとき、玄関の壁に浜崎あゆみと書かれたサインを見つけた。彼女がまだ歌手デビューする前に、あるドラマに出演したとき、ロケで泊まったのだと言う。ちょっと縁を感じてしまった。

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